井上陽雄 浄土真宗本願寺派僧侶・新会代表・宗教者として
この会の前身である「医療の心を考える会(医考会)」は、私にとって大きく視野を広げてくれた会でした。
たくさんの人と出会い、たくさんの言葉と出会ったことが、私の大きな財産となった。
だから、その会の存続ができないと思ったときには、とても残念な気持ちになった。
でも、世話人も「続けていきたい」と、同じ気持ちであったということがわかって嬉しかった。
医考会との出会いは、代表の一人であるご門徒の小出優子さんが、義父を長岡西病院で看取られたのがきっかけだった。
ご本人がご自宅から西病院へ転院するとき、車窓から米山を見て「これが最後かもしれない」と言われたと聞いた。
とても辛い気持ちであったと思う。その方の祥月命日が1月29日で、その時もお参りさせて頂いた。
お仏壇に置かれているその方のお写真を見ると笑っておられる。
その時に、そういえば医考会の物語はここから始まったんだなぁと思った。
ですから、人には、死で終わらないで、生きている人と共に物語があるのだと思っている。
「医考会」から名前を変えての「新潟いのちの物語をつむぐ会」では、その物語を通じて「いのち」を見つめていこうと思っている。
この度の第一回例会では、樋野興夫さん(順天堂大学医学部教授)の言われた「命より大切なものがある」や若松英輔さん(批評家)の言われた「悲しみは光が訪れる最初の合図なのかもしれない」を、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を通してお話ししようと思った。
また、「年々にわが悲しみは深くしていよよ華やぐ命なりけり」という岡本かの子さん(仏教研究家)の言葉があるが、そこにも「いのちの物語」を深めていく何か大きなヒントがあるように思う。
参加される皆様方や世話人とで育てていく「新潟いのちの物語をつむぐ会」の今後の活動をとても楽しみにしている。
合掌